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アッチの世界のアート:アドルフ・ヴェルフリ展【鑑賞ポイントのまとめ】

 

精神病棟で作品を作り続けたアウトサイダー・アートの伝説、アドルフ・ヴェルフリ。

 

東京ステーションギャラリーでの「アドルフ・ヴェルフリ展」鑑賞して来ましたので、記念に私の所感とヴェルフリまとめをしておきます。

 

専門性は全くありませんが、興味本位の人がとっつきやすい感じの「まとめ」的な伝わりやすさを心がけます笑。

 

 

1、アウトサイダー・アートってなに

ヴェルフリは美術史的にはアウトサイダー・アートという枠に入る芸術家。

 

アウトサイダー・アート(フランス語だと“アール・ブリュット”)とは、西洋美術の基礎などを専門的に学んでいないが「芸術」として評価できる作品・作家をさす言葉。

 

乱暴にまとめますと、一般的には精神病や知的障害者、受刑者などの作品というイメージです。

とにかくピカソやら西洋のアカデミックな芸術とくらべて「本流ではない」ので「アウトサイダー」ということですね。

 

ヴェルフリは生涯精神病棟から作品を輩出した人物かつ、比類なき高い芸術性ということで、この「アウトサイダーアート」の代表選手なのであります。

 

 

 

2、作品タイトルから伝わってくる「統合失調症」の特徴

 

私はいつもそうなんですが、作品を見る時、可能な限り下調べをしないで見ます。先入観で作品の見え方が180度変わってしまうので。

 

ヴェルフリに関しても、「アウトサイダー・アートの人」という基礎知識以外はあえて入れて行きませんでした。

が、やはり、作品そして作品タイトルで「あぁ統合失調症だ」というのがすぐに伝わってきましたよ。

 

特に作品タイトルで一発でわかりました。

タイトルは、今回の展覧会では、原題の雰囲気に可能な限り配慮した邦題を付けてくれていました。

たとえば、

 

リーゼリ[リーゼちゃん]・ビエリ!死

 

こんな感じのタイトルです。

私は病気の専門家ではないのでアレですが、この意味をなさない言葉の羅列、・や!の唐突さなど、完全に、統合失調症の人の操るそれだなと。

 

もちろん「統合失調症である」というだけでヴェルフリ作品は語れないのでしょうが、私としてはそれが分かっただけでも鑑賞する軸になり、ある意味「安心して」見られました(病名がつくと安心する心理と同じ)。

 

 

3、作品は生涯変わらぬ「俺の物語」。最後は胃もたれ気味にw

 

ヴェルフリは35歳から絵を描くようになり、66歳に亡くなりまで描き続けるわけですが、作風は正直、ほとんど一緒。

 

ちょっとした変化はあり、たとえば、

 

初期作品は白黒で、

 

色が付き始め(医師が色鉛筆を与えたから)、

 

 

音符が多用されて楽譜のようだったり(実際自らを「音楽監督」としていた)

 

数字が敷き詰められるようになったり、

 

コラージュ作品になったり、

 

 

そういった変化はありますが、基本同じ印象です。

 

作品のほとんどのテーマは「自分のための壮大な戯曲」になっており、言うなれば俺物語でした。

 

ヴェルフリ作品で、この音符は何を奏でているの?この文字の羅列にはどんな意味が?と、細部を深掘りすることはナンセンス。

 

だって細部の内容を訳すと、こんなですよ↓

「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」(展覧会図録)より

 

わあwww

イミフwww

 

ということで、無理に意味を求めるなどせず、ここは素直に作品の凄みを感じるのが正解かと。

 

 

とにかく、1人の作家であっても大概は時期によってアプローチや材質、平面から立体など人生の中で表現手法が変わっていくものだけれど、ヴェルフリの場合はずっと同じ(に見える)。

 

そういうわけで、作品1つ1つは非常に芸術的で凄みがあるにも関わらず、最後のほうは少々食傷気味になってきます。

1作品ごとの情報量の多さもハンパないので鬼疲れるwww

 

でもこれもヴェルフリという人の生涯をかけた一大プロジェクトなので、最後まで見届けましょう。笑。

 

 

 

4、気になるヴェルフリの生い立ち

 

作品を見ていて気になったのは、彼の生い立ち。

ここには、参考までに生まれてから作品を描き始めるまでを載せておきますので、気になった人は辿ってみてね。(ちょっと長いです)

 

1864

スイスの貧しい家庭に7人兄弟の末っ子として生まれる。父ヤコブは酒癖が悪く、犯罪に手を染めて牢屋に入ることもしばしば。病弱な母アンナは貧困に苦しみ、幼いヴェルフリと兄弟の養育は里子奉公教会に託された。

 

1872(8歳)

この頃までに一家はほぼ離散。ヴェルフリは母とは別の農場に預けられ、農場や大工の家などを転々とするが、朝から晩まで働かされ折檻を受けるなど、学校に通わせてもらえないことがままあった。

 

1873(9歳)

母アンナが亡くなる

 

1875(11歳)

精神錯乱の末、父ヤコブ亡くなる

 

1876〜1888(17-24歳)

何度か女性と恋におち、中には婚約することもあったが周囲の反対などで実ることはなかった

 

1890(26歳)

14歳少女に性的暴行未遂。数ヶ月後に7歳少女への性的暴行未遂で逮捕、2年の刑に服す

 

1895(31歳)

女児への性的虐待未遂で再び逮捕。精神鑑定の結果、統合失調症と診断され、ヴァルダウ精神病院へ収容される。

 

1899(35歳)

この年に、新聞用紙に絵を描くようになる

 

1908(44歳)

空想の自伝的作品「揺りかごから墓場まで」に着手。

・・・以後、1930年66歳に腸の病気で亡くなるまで怒濤の勢いで創作活動を続ける。

 

※「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」(展覧会図録)年譜を参考にしました
見て頂ければわかるように、彼の幼少期は悲惨www

特に初期作品の「揺りかごから墓場まで」は、その悲惨な幼少期の記憶を書き換える作業だと言われてる。

 

31歳以降は精神病棟から出ることはなかったみたいですが、一応生前にその芸術性は一定層に認められ、自身もアーティストである自覚がある中で作品制作に没頭していたようなので、そこにちょっと救い(?)を見いだしました。

 

 

東京ステーションギャラリー・ヴェルフリ展は2017年6月18まで

 

ヴェルフリ単体での展覧会としてはもちろん初、最初で最後の可能性も高いので、あと1ヶ月、興味のある方お忘れなく〜。

 

(おしまい)

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